修復済み 市松人形 大正 52㎝ アンティーク 縮緬 振袖 光龍斎系 三代目東光

#しっぽのお人形

午前中のやわらかな光を受けると妖しい美しさを漂わせ始める。
大正期の市松さんの魅力ですね。その理由の一つは、ガラスの裏側に墨を塗ったという独特の目にあります。黒みが深く吸い込まれそうになるのです。

たぶん光龍斎だったと思いますが、定かではないので光龍斎系と記しました。これだけの美しさですから、かなりの技量の人形師さんだったには違いないでしょう。

大正期はモダン文化が花開いた時代です。
西洋の絵画やファッションもさかんに取り入れられました。
そう考えると、漱石の小説に登場するようなこの黒目勝ちの瞳にも、ラファエル新派をはじめとする西洋絵画の影響があるのかしら、なんてつい想像をたくましくしてしまいます。

10年以上前に、傷みの多い状態でお迎えしました。
そこで、当時答礼人形の修復も手掛けていらした三代目(先代)東光様の手に、この子の再生を委ねました。

いったん下塗りまではがし、丁寧にごふんを塗り重ねるという本格的な修復で、ごふんはご当家のほんのり紅を含んだ白みのあるものをお使い下さいました。
髪は新しい人毛をにかわで貼って頂いています。さらさらで癒されます。
眉はアンティークを意識してぼかしに。

何年か前にこちらで購入した縮緬の着物を着せました(お仕立て下さった方にはいつか出品の際に着せたいと申し上げ、快諾して頂きました)。袷の比翼付きで、重ねられた袂も袷の本仕立てです。八掛けには無地の赤縮緬が使われた大変贅沢な逸品です。
ふっくら見せたかったので、一番下に古い肌襦袢を着せました。

帯はどちらの着物にも合うよう、大正モダンの雰囲気を汲む黒い葉柄の縮緬を用い、青系花柄縮緬とはぎあわせました。「昼夜帯」と呼ばれるリバーシブル仕立てです。

なお、手足に糊跡や修復後にできた乾燥ひびがあります。写真でご確認下さいませ。


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